キーレスアンテナやTPMS、GPSなどのアンテナに加え近年ではITSやIoT、5Gなど自動車に搭載されるアンテナは増加の一途をたどる一方、車内で配置可能なスペースは限定されており、必要な性能を満足するのは簡単ではなくなってきています。本事例では、「車載 準ミリ波レーダー解析」でもご紹介しました3D3Dカップリング手法(3D/3D Chaining)を使ったアンテナ配置検討の事例をご紹介します。
解析手法
解析のフローとしては、初めにアンテナ単体を細かなメッシュサイズと車両に比べて小さい解析領域でFDTD解析を実施し、次にアンテナ単体に比べて大きいメッシュサイズと広い解析領域で車両をモデル化して全体をFDTD解析しています。
今回はアンテナ単体モデルをFDTD法で解析していますが、モーメント法で解析する事も可能です。
3D3Dカップリング手法の利点
本カップリング手法(FDTD⇒FDTD)には下記のようなメリットがあります。
- 計算資源の削減
アンテナ単体・車両全体それぞれ個々のメッシュ数が大きくならないため、
計算時間・メモリ使用量が節約可能。
- 解析精度の向上
アンテナモデルを細かいメッシュによって詳細形状を再現した解析
アンテナ傾斜取り付け時のFDTD階段近似による精度劣化回避
- 配置検討の容易さ
アンテナの配置、角度など変更の場合も、全体解析のみ再実行(アンテナ単体解析は必要なし)
3D3Dカップリング手法の妥当性確認
簡易車両モデルを使って、アンテナを含め全てFDTDで作成したモデルと3D3Dカップリングを適用したモデルで電界分布解析結果を比較し妥当性を確認しました。
カップリング有無でほぼ同じ電界分布が得られる事が確認出来ます。周波数は315MHzで比較しています。
3D3Dカップリング適用無し(全て一度に計算)
3D3Dカップリング適用有り(アンテナは別途計算して組み合わせ)
アンテナ配置位置による放射電界分布の比較
車両モデルのダッシュボード近傍にアンテナを配置し、アンテナが車両中心線上にある場合と、そこから横に1cmずれた場合で解析結果を比較しました。(周波数:315MHz)
- 車両近傍電界分布の比較
アンテナ位置(車両中心線上)
アンテナ位置(車両中心から横に1cmシフト)
- NearField電界分布の比較(グランド高1m、車両から約50mのエリア)
(注:CEM Oneでは解析領域外での電界値計算機能をNear Field機能と呼んでいます)
- コンター比較 アンテナ位置(車両中心線上) アンテナ位置(車両中心から横に1cmシフト)
- 電界水平偏波成分カーブ比較(グランド高1m、車両中心から半径10m及び50m位置)
遠方界機能ではグランドが存在する場合には水平電界成分は0となり値を持ちませんが、Near Field機能ではFDTD解析領域外任意位置における電界値(θ、φ、r成分)の計算が可能となっています。
本事例のように、アンテナ位置によって放射電界分布が大きく変化するような事象もCEM Oneの機能を組み合わせて検討を行って頂く事が出来ます。
また、下記のようなアニメーションで電波の挙動を確認できるので、現象の確認や対策などにご活用頂けます。
アンテナ位置(車両中心線上)
アンテナ位置(車両中心から横に1cmシフト)
XZ断面上の電界分布アニメーション
アンテナ位置(車両中心線上)
アンテナ位置(車両中心から横に1cmシフト)
動画ファイル形式