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PAM-RTM 浸透係数のお話

  • 2020/07/14
  • Yoshihiro Aono
PAM-RTM 浸透係数のお話

今回はPAM-RTMの材料物性である浸透係数のお話です。

前回、PAM-RTMは樹脂含浸プロセスをシミュレーションするとご紹介しましたが、含浸という言葉はピンと来ない方もいるかと思います。

含浸とは物質の隙間に流体が浸透していく現象を意味します。
有名なものですと地下水の流れが挙げられまして、土の隙間の中に水が通り抜けていく現象といえば、イメージがつきやすいかと思います。

樹脂複合材の強化材である織物繊維や一方向材繊維では、繊維と繊維の間に必ず隙間が存在する多孔質メディアとなっています。

複合材の成形は、この繊維の隙間の中に液体状の樹脂を染みわたらせるプロセスを踏むことであり、つまり地下水と同じ含浸現象と言えます。

含浸による流れ場は、ダルシー則で解かれることが一般的です。
ダルシー則では、流れの速さは、材質の浸透係数に比例するという計算が行われます。

浸透係数は、パーミアビリテイと呼ばれることもあり、材質の中にどの程度流体が染みわたりやすいかを示した材質固有の物性値となります。繊維の織構造、積層構造、繊維体積含有率に依存することが知られております。

また、ダルシー則における浸透係数は、異方性を持つ物性値として入力・計算することができ、K1、K2、K3という三つのパラメータで表されます。

K1、K2は面内方向の浸透係数、K3は板厚方向の浸透係数となります。下の図はそのK1、K2、K3のイメージ図となります。

K1K2K3
下記のアニメーションは、K1、K2が異なる値である場合(左)と、K1、K2が同じ値である場合(右)の含浸シミュレーションの比較です。

K1≒K2の場合、K値の大きさに対応して楕円状にフローが広がっていきますが、K1=K2の場合、真円状にフローが広がっています。


また、下記のアニメーションは、製品表面に非常に高いK値を持つ材料が配置された含浸アニメーションです。
表面を先行して樹脂が流れたのち、板厚方向にゆっくりと染みわたっていく挙動が確認できます。

これは、板厚方向のK3値が非常に低い物性となっているためであり、K値が含浸現象を計算する上で非常に重要な物性値であることが理解できます。


以上、浸透係数のお話でした。