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VR検証で最適な作業姿勢を見つけよう
- 2017/05/08
- SIM Jaebum
最適な作業姿勢を見つけることは試作・実機が出るまで検証自体が難しいです
床から何ミリなどの位置情報から作業姿勢を考えることも、CADの中で検証することも簡単ではありません。
設計者が作業に問題ない位置だと判断した場合でも、実際作業する人にとっては作業が厳しい、作業が不可能な場合があります。
また、作業者の視野の確保困難、不安定な姿勢、作業半径の中にある他の設備などが原因で怪我や事故をおこす場合も少なくありません。
今回はIC.IDOのエルゴノミクスを活用して模擬検証を行いました。
最適な作業姿勢を見つけるまでの過程を紹介します。
作業内容と目標オブジェクトの位置を把握
作業内容
奥にあるバルブを操作する。(バルブは2つ、下の画像から確認いただけます)
評価基準
バルブの操作に問題はないか
視野確保はできているか
部品と身体の干渉はしていないか
姿勢は安定しているか
入り口の幅は約460ミリであり、成人男性が入るには厳しい程の狭小な空間です。
ターゲットは奥にある水色のバルブで、写真に赤く標識をつけてあります。
上から見た画像ですが、バルブはかなり奥の方に位置していて、他の多数の部品を避けて手を入れる必要があります。
奥の方からバルブを見た時の画像です。
バルブの高さは床から約130ミリで低いところに位置しています。
写真のみでは実感が難しいですが、多数の障害物があるため視野確保も困難な状況です。
皆様はどのような作業姿勢をイメージされますか?
スクロールを下げる前に、作業姿勢を一つ思い浮かべてみませんか?
続く↓
検証開始
まず、私は横になる必要のない一般的なアプローチを考えてみました。
それがこちらです。
身体が設備と多少干渉していますが、一旦、可能性を確認するために無視します。姿勢は左に偏っていて、少し不安定な感もありますが、空間の中にはきちんと入っています。
ここで少しIC.IDOの機能を紹介いたします。
IC.IDOではダミーの「腕の挙動範囲」や「集中視覚」、「周辺視覚」を表示する機能があります。
青系の色が左腕の挙動半径、茶色の半球が右腕の挙動半径、灰色のコーンは集中視覚・周辺視覚を表しています。※色・透明度の設定は自由に変更できます。
半球には現在半透明がかかっているので、内側にある部品は元の色に見えて、外側の部品ははそれぞれの色が入ったファルタがかかったように見えます。
それでは、説明を続けます。
左腕の半径を表示させてみました。画像ではわかりにくいですが、左下に青系の半球があります。バルブはギリギリ左腕の挙動範囲の中にあり、元の水色に見えています。
手前のバルブはギリギリ届く範囲でしたが、奥のバルブまでは厳しそうです。
そして、顔面が他の部品と干渉しています。左腕の干渉により操作が難しいです。顔面の前にフレームがあるため、怪我の恐れも考えられます。
その上、ダミーの目線に切り替えると視野確保が全くできていません。
腰を曲げるなど、腕や足をいろいろな方向に動かしてみても、顎の下には大きいものが邪魔していて、視野の確保が難しいです。干渉も厳しく、目の方に鋭い金属物があり、怪我の恐れがあります。
見やすくするため非表示に設定しておりますが、背中の後ろにすぐ壁があるので、後ろに下がることも難しい状況です。
この姿勢は不適切だと判断しました。
バルブの操作に問題はないか:△
視野確保はできているか:☓
部品と身体の干渉はしていないか(干渉がなければ◯):☓
姿勢は安定しているか:☓
うつ伏せ姿勢を検討
見た目はきれいに入ったように見えます。
手もバルブにきちんと届いているように見えます。
しかし、違う角度から干渉を確認してみると、干渉する部品が多すぎて作業が難しいです。手は最大限伸ばしてギリギリ届く距離であり、体を中に入れても右手の脇の下の方に部品が多く当たってしまいます。
また、うつ伏せ状態で視野確保が難しいので、この姿勢も適切ではないと判断しました。
バルブの操作に問題はないか:☓
視野確保はできているか:☓
部品と身体の干渉はしていないか(干渉が無ければ◯):☓
姿勢は安定しているか:△
仰向け姿勢を検討
左腕のすぐ下に床があるため、手を奥に曲げることが難しいです。
右手は写真では届けられそうに見えますが、バルブに届きません。左手はバルブの下からしかアプローチできないため、この姿勢も厳しいと判断しました。
バルブの操作に問題ないか:☓
視野確保はできているか:△
部品と身体の干渉はしていないか(干渉が無ければ◯):△
姿勢は安定しているか:◯
様々なパターンを検証した結果、最適だと判断した姿勢
一旦、ターゲットの反対方向に座った状態からスタートします。
横向きの状態で床に接触します。
そして、上半身を伸ばし作業空間に入ります。
奥の方から見ると、腕も上の方に動けそうで、空間に余裕があります。
灰色で少し見えにくいですが、人間の目線がきちんとターゲットに向いていることが分かります。
奥の方のバルブにも手が届きます。
違う方向から見た姿勢です。
IC.IDOはモニターのビューをダミーの目線に切り替える機能があります。
フレームが少し邪魔していますが、頭部を動かせる空間的余裕があるので、作業には特に問題ないと判断しました。
腕のリーチは問題ないか:◯
視野確保はできているか:◯
部品と身体の干渉はしていないか(干渉が無ければ◯):◯
姿勢は安定しているか:◯
まとめ
作業性・姿勢の検証は少し主観的になりがちですが、腕の半径、視野、干渉など検証する要素を追加し、最適な姿勢を追求しやすくなります。
作業性検討で中々最適な姿勢が見つからない場合は、作業しやすい位置に仕様を変更することも対策の一つですが、設計変更が難しい場合、もしくは空間の節約やデザイン性を重視場合には、できる範囲で最適な姿勢を見つける必要があります。
今回の検証はDesktopモードで検証し、HMDや他のImmersive環境は使っていませんが、Desktopで姿勢が中々決められない場合や、できた作業姿勢をもう一度きちんと確認したい場合は、Immersive環境で検証することをおすすめします。
IC.IDOで検証した姿勢は保存して、いつでも切り替えることができます。
また、性別、身長、体重、体型など異なるタイプのダミーに適応することも可能です。