誘導加熱の計算例としては,これまでに 誘導コイルを使ったプラズマ や CVD 反応炉 を紹介していますが,本計算例では,誘導コイルに対して被加熱物が移動しながら加熱処理される様子をシミュレーションする例を紹介します.移動物体を考慮するために,CFD-ACE+ が持つ機能の一つである arbitrary interface を利用し,片方の領域の grid を移動させながら非定常計算を行います.
以下に,本モデルの概略を示します(長さの単位:mm).二次元軸対称モデルとして考慮できるモデルですが,arbitrary interface は三次元で利用される機能であるため,θ方向に 20°分の角度を持たせています.
加熱される work piece は,向って左側から右側に 5 mm/s のスピードで移動し,その間に誘導コイルによって加熱されます.コイルの周波数は 10 kHz,work piece の比透磁率は 5 を仮定しました.
グリッドがスライドする様子を以下にします(work piece とコイルの断面は grid を非表示にしています).
Fig. 2 work piece と共に移動するグリッド
arbitrary interface のつなぎ目では,node が不連続となり,ソルバーによって補完されます.以下に計算結果を示します.
☆
始めに,速度分布を示します.
Fig. 3 速度分布
次に,work piece 内の誘導加熱(単位体積当たりのW数)の分布,及び,温度分布を示します.
Fig. 4 work piece 内の誘導加熱( Induction Heating )
Fig. 5 基板表面の径方向に対する温度分布
表皮効果の影響により,work piece の表面近傍で Induction Heating が高い値を示し,熱伝導によって高温部が内部へと広がっています.また,最高温度を示す場所は,Induction Heating がピークになる場所に対し,若干の時間差をおいて追随する様子が分かります.
周波数が高く表皮(skin depth)が非常に薄い場合や .比透磁率が非常に高い場合,安定して計算を収束させるのは難しくなるようですが,設計指針を得るための有効な手段になり得ると考えられます.
☆