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鋳造シミュレーションProCASTの特徴③  -伝熱計算1-

  • 2020/07/08
  • Aya Iwata
鋳造シミュレーションProCASTの特徴③  -伝熱計算1-

今回は特徴についてのご説明の前に、熱の移動について簡単にお話しいたします。

熱の移動(伝熱)の現象ですが、金属など同じ物質内でのある位置からある位置までの熱の移動である熱伝導、2つの物体間での流体を介した熱の移動である対流熱伝達、電磁波による熱の移動である熱放射(輻射)の3つの形態でよく説明されます。
熱放射の例としてよく挙げられるのが太陽と地球間の熱放射の例で、太陽光(電磁波)で地面が温まる現象が扱われます。対流熱伝達の例としてよく取り上げられるのがエアコンかと思います。

これら熱伝導、熱伝達、熱放射の3つのどの影響もProCASTでは考慮して計算されます。

中でも放射計算時に形状を考慮して計算することが可能であるところがProCASTで特徴の1つと考えておりますので、そちらについて紹介いたします。

上記の熱放射の例から、太陽光が木などに当たって地面が日陰になっているところでは温かくならない、つまり障害物があると熱は地面に届かないということがわかるかと思います。
このように放射計算では自身の形状や周囲の形状に依存しますので、その考慮をしないと結果が異なってくる可能性があります。
具体的に熱放射の計算で形態係数(view factor)を導入することで、自身や周囲の形状を考慮して放射計算が行われるようになります。
形態係数ですが簡単に説明いたしますと、微小な面要素から射出された放射エネルギーのうち、もう一方の微小な面要素に到達する割合を示す値でして、面と面の配置や織りなす角度によって求められます。

また放射の熱量に関して物体の4乗の差であらわされることから、伝熱の中で温度が高いほどこの放射の影響は大きくなりますので、複雑な形状の鋳造解析では形態係数を導入することで精度が向上する可能性があるかと思います。

試しに形態係数を考慮した場合の温度分布の結果(左図)としない場合の温度分布の結果(右図)を下記に示します。形態係数を考慮した場合では、20 ℃の円柱状の炉を設置してそれと自身の放射を形状を考慮して計算しています。

enclosurenon-enclosure

こちらの通り形態係数を考慮した場合、端と比較して中心部が冷えにくくなるため、温度分布に差が出ていることが見て取れるかと思います。こちらは単純な形状ですが複雑な形状ですとより差が顕著に表れるかと思います。

今回は以上で終わりにします。

今後ともよろしくお願いいたします。