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ProCASTの熱応力解析モデル(5) 高温域における材料物性

  • 2021/04/20
  • Akihiro Ito
ProCASTの熱応力解析モデル(5) 高温域における材料物性

熱応力解析に限らず,材料の流動,構造などの数値解析には密度,粘度,ヤング率といった材料物性値が必要となります.室温の塑性加工であれば引張試験などによって得られたデータを使って材料物性値を得ることができますが,鋳造プロセスでは室温から溶融状態を含む高温状態までの幅広い温度域での材料物性値が必要となり,測定方法が困難になるだけではなく,温度依存データを採取するために多くの測定が必要となり,結果として物性値取得のコストが多大になってきます.

 

多くの鋳造シミュレーションソフトウエアでは何らかの方法で取得した材料物性値がデータベース化されてソフトウエアのパッケージとして提供されていることが多くなっています.汎用ダイカスト製品などの場合はADC12など限られた材料のデータがあれば解析可能ですが,様々な製品,材質の鋳造を行う場合や新たな開発材などの場合にはその材料にあわせた材料データが必要となり,これらすべての材料物性値を計測取得することはコストや測定期間の観点から容易ではありません.

 

そこで最近多く活用されるようになってきたのは計算による材料物性値の算出という方法です.材料の化学成分を入力することで必要な材料物性値を計算によって求めるもので,計算の元になる各材料,成分や成分間の相互作用などの値がデータベース化されており,そのデータから各物性値が得られます.この方法では化学成分範囲の制約内であればすべての材料物性値を得ることができます.

 

ProCASTではCompuTherm LLC社と提携して熱力学データベースPandatの計算材料データベースを提供しており,下図のように化学成分を入力することで必要な材料物性値が計算により得られます.

MaterialDB_Input

MaterialDB_Output

これはFe, Al合金だけではなくCo, Cu, Mg, Ni, Ti合金に対応しており,例えばAl合金については上図でも確認できますようにSi, Mg, Cuといった主要成分はもちろん,Li, Ni, Crなどの微量成分にも対応しており,実測では難しい様々な成分の影響を考慮した解析が可能です.

 

それでも比熱や密度などの熱および流動の物性値などは比較的測定方法が整備されていますが,高温での熱応力解析データ,特に固相率が1以下の半溶融状態は測定方法自体が難しいため,このような計算による物性値の算出が現実的には多く活用されることになります.

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