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ProCASTの熱応力解析モデル(4) 凝固中の応力生成

  • 2021/04/01
  • Akihiro Ito
ProCASTの熱応力解析モデル(4) 凝固中の応力生成

ここまでは一般的な温度変化を伴う熱応力解析について述べてきましたが,ここでは鋳造プロセスにおける現象に着目した熱応力解析について説明します.

鋳造プロセスにおける現象,とは具体的には「凝固」です.製品に発生する熱応力は冷却中の熱収縮や弾塑性挙動によって生じますが,鋳造プロセスの最初の状態は溶融金属,すなわち液体の状態で,液体はある程度自由に移動できる状態ですので,外力などが負荷された場合,内部応力やひずみが生じることなく,液体が移動する形で外力の結果が表れます.

しかし凝固して液体から固体に変化すると,固体となった鋳物の剛性に応じて内部応力やひずみという形で外力の影響が表れることになります.

ではどこで外力の影響が応力として現れるようになるのでしょうか.

 

一般に凝固金属は液相線温度から固相線温度まで温度低下する過程で,鋳物全体としてのマクロ的な凝固については下図のイメージのように固相率が0から1まで変化することで凝固を表現します.例えば固相率0.1の状態を想像すると,液体の中に1割だけ固相がある状態ですが,溶融金属の中に固体の結晶核が点在しているような状態を想像すると,これは振る舞いとしてはほぼ液体と同じであり,応力は0と考えて問題ないでしょう.

固相率図

 

ではいったいどの固相率から応力が発生するか,が問題ですが,これは合金によって形成される凝固組織も異なりますので正確に決定することは難しく,解析する方の経験やデータに基づいた設定によらざるを得ません.

 

ProCASTではこの応力計算を始める固相率を初期設定0.5として計算されますが,この値をユーザーが設定して計算を行うことができます.

この応力計算開始の固相率を変化させて計算すると,下図のように応力値が異なってくることがわかります.ケースによりますが,最終的な凝固後の応力値に大きな差がなければ製品としての残留応力評価には影響は少ないと言えますが,点線で囲んだような凝固冷却中の応力値として差が生じる場合には,例えば凝固中に発生する熱間割れ発生には影響を及ぼすことになりますので目的に応じて適切な応力解析設定が必要と言えます.

Stress_FS

 

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