技術紹介

CFD-ACE+ を用いた触媒反応のシミュレーション( Modeling of Catalytic Reaction using CFD-ACE+ )

  • May 18, 2009 11:00:00 AM
  • 株式会社アテナシス 池田 圭
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CFD-ACE+ は,CVD(化学気相成長)等の表面反応に加え,排ガス処理等でも利用されている触媒反応を考慮することも可能です.ここでは,モノリス(monolith:多数の小さなチャネルを有し,表面積を大きくした多孔質内に触媒をコートしたもの)を例にとって,メタン(CH4)に関する白金触媒燃焼の例を御紹介致します.

モデルの形状は,直径及び長さ5cm内に円筒状を仮定し,内部にガスの流れる方向に沿ったチャネルが数多く配列されているものとします.CFD-ACE+ では,多孔質をモデル化する方法として,抵抗係数を用いた porous medium が準備されていますので,一つ一つのチャネル形状を細かく考慮する代わりに,この多孔質モデルを利用しました.

Fig. 1 モノリスの計算モデル(二次元軸対称)Fig. 1 モノリスの計算モデル(二次元軸対称)

シミュレーションでは,半径2.5cm の二次元軸対称モデルとして取り扱っています( Fig. 1 ).CH4,H2,N2,及び,O2 を導入ガスとして考慮し,以下の計算例では,H2 及び,メタンの体積割合をそれぞれ 3.5%,3%,とした計算例になります.

メタンが自発着火するには,600℃程度よりも高い温度が必要と考えられていることから,以下に示す最初の計算例では,0.3 [W/rad](約 2W)を多孔質の領域に加えることで着火させています.

Table 1 考慮した触媒表面の反応

Table 1 考慮した触媒表面の反応

考慮した反応は,Table 1 にあるような式です.(S) は,表面サイトを意味します.イメージは,Fig. 2 のようになります.

Fig. 2 反応モデルと表面サイトFig. 2 反応モデルと表面サイト

以下に,代表的な計算結果を示します.

■ 圧力,流速,流れ関数,及び,温度の分布(計算領域全体)

Fig. 3 圧力分布

Fig. 3 圧力分布

向って左側が inlet,右側が outlet になります.圧力の値は,outlet での圧力を 1e5 Pa とした相対値です.

Fig. 4 速度分布

Fig. 4 速度分布

Fig. 5 流れ関数

Fig. 5 流れ関数

Fig. 6 温度分布

Fig. 6 温度分布

この計算条件(参考資料)では,比較的断熱に近い条件となっており,最高温度は 1000℃ を超えていますが,モノリス内部で燃焼している様子がうかがえます.

■ 各ガス種のモル分率(計算領域全体)

Fig. 7 CH4 のモル分率

Fig. 7 CH4 のモル分率

Fig. 8 H2 のモル分率

Fig. 8 H2 のモル分率

Fig. 9 N2 のモル分率

Fig. 9 N2 のモル分率

Fig. 10 O2 のモル分率

Fig. 10 O2 のモル分率

Fig. 11 H2O のモル分率

Fig. 11 H2O のモル分率

Fig. 12 OHのモル分率

Fig. 12 OH のモル分率

Fig. 13 CO のモル分率

Fig. 13 CO のモル分率

Fig. 14 CO2 のモル分率

Fig. 14 CO2 のモル分率

温度分布からも予想された通り,CH4 及び H2 のモル分率がモノリス内部で急激に減少し,H2O や CO2 に変わっている様子が分かります.

■ 表面サイトの割合(モノリスの部分のみを表示)

Fig. 15 各表面サイトの割合_All

Fig. 15 各表面サイトの割合

本計算条件では,流れ方向に 5cm のチャネルを考えていますが,最初の 2cm ほどを通過した時点で,反応は概ね終了していると思われます.

 


次に,先の計算例では,0.3 [W/rad] の heat source を考慮していましたが,参考までに,heat source 無し(外から熱を加えない条件)の計算結果を以下に示します.

■ 圧力,流速,流れ関数,及び,温度の分布(計算領域全体)

Fig. 16 圧力分布Fig. 16 圧力分布

向って左側が inlet,右側が outlet になります.圧力の値は,outlet での圧力を 1e5 Pa とした相対値です.

Fig. 17 速度分布Fig. 17 速度分布

Fig. 18 流れ関数

Fig. 18 流れ関数

Fig. 19 温度分布

Fig. 19 温度分布

温度上昇はするものの,メタンの改質に至る温度には上昇しないことが分かります.

Fig. 20 CH4 のモル分率Fig. 20 CH4 のモル分率

Fig. 21 H2 のモル分率

Fig. 21 H2 のモル分率

Fig. 22 N2 のモル分率

Fig. 22 N2 のモル分率

Fig. 23 O2 のモル分率

Fig. 23 O2 のモル分率

Fig. 24 H2O のモル分率

Fig. 24 H2O のモル分率

Fig. 25 OH のモル分率

Fig. 25 OH のモル分率

Fig. 26 CO のモル分率

Fig. 26 CO のモル分率

Fig. 27 CO2 のモル分率

Fig. 27 CO2 のモル分率

H2はほとんどなくなっていますが,CH4 はほとんど反応が進んでいない結果となっています.

■ 表面サイトの割合(モノリスの部分のみを表示)

Fig. 28 各表面サイトの割合_AllFig. 28 各表面サイトの割合


更新状況:

May 18 2009 heat source 無しの結果を追加しました.

参考文献:

Modelling and simulation of heterogeneous oxidation of methane on a platinum foil
Catalysis Today 21 (1994) 461-470
0. Deutschmann, F. Behrendt, J. Wamatz

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