技術紹介

CFD-ACE+ を用いた自由表面のシミュレーション( Free Surface (VOF) Modeling using CFD-ACE+ )

  • Jun 10, 2009 2:00:00 PM
  • 株式会社アテナシス 池田 圭
CFD-ACE+ を用いた自由表面のシミュレーション( Free Surface (VOF) Modeling using CFD-ACE+ )

液体と気体を同時に取り扱う問題は,相変化にウェイトを置く二相流( Two Fluid )と,VOF( Volume of Fluid )による自由表面の問題に大きく分けられます.

以下では,閉じた空間内に水と空気が入れられており,下から加熱する,という例題(蓋をした鍋の中の流れ解析に似ています)をご紹介致します.モデルは二次元軸対称とし,以下のような形状・寸法を仮定しました.なお,最下部に厚み0.5mm のアルミの板を考慮しています.

Fig. 1 二次元軸対称の計算モデルFig. 1 二次元軸対称の計算モデル

半径20mm,高さ20mm の円筒内に,高さ10mm ほど水が入れられ,中央底部の半径8mm の部分から,熱( 2e5 W/m2 )が加えられます.接触角は壁の表面状態に強く依存しますが,ことでは 70°と仮定しました.本例題では,inlet/outlet は設けておらず,閉じた系を仮定しています.

CFD-ACE+ が持つ module のうち,Flow・Heat・Turbulence・VOF の4つを利用しました.また,表面張力と水の密度に関しては,温度依存性を考慮しています(空気の部分は,理想気体として温度依存性を考慮しています).本モデルでは,Bussinesq 近似は使っていません.乱流モデルは,ここでは Low Re Model を用いました.

重力を考慮する関係で,最初の4秒間は熱を加えない計算を行い,その結果を初期条件として,熱を加えてから20秒間をシミュレーションしてみました(なお,4秒間計算した初期状態においても,若干の流れが残っており,完全に静止した状態にはなっていません).

以下のアニメーションが,その計算結果になります.

 

 

 

 

 

Fig. 2 水の流れと温度分布(左),及び高さ10cm以下の温度分布(右) 

向って左側は,VOF による水(水色)と空気(白)の界面が分かるように可視化されています.また,速度ベクトルが重ねて表示されています.向って右側は,水の温度分布を示しています.

底部の金属壁を通じて熱が横方向にも伝わり,水平方向の温度分布は,金属壁を考慮しない時よりも小さくなっています.対流の影響により,中央から上昇して周囲で下降する流れが出来ますが,最初に逆方向に循環する流れがある本モデルの例では,流れは徐々に変化する様子が分かります.

通常の VOF の解析では,密度一定として(Bussinesq 近似を用いて)解析することが多いのですが,今回のように,密度に対する温度依存性を考慮した解析も可能です.

なお,参考までにグラスホフ数( Grashof Number : Gr )とレイノルズ数( Reynolds Number : Re )を見積もってみました.熱を加える初期の段階で,流速分布は以下のようになっています(表示の最大値を 0.02m/sとしました).

Fig. 3 熱を加える直前の水の流れと速度分布Fig. 3 熱を加える直前の水の流れと速度分布

代表長さを底から水面までの10mm,代表速度を 0.02m/s とすると,Re数~200となります.この時,温度差を 20K とすると,Gr数~40000 となり,浮力と慣性力の比を表す Gr/Re2 ~ 1 となります.この値が大きくなるにつれて自然対流による流動が支配的になるとされていますが,別の計算結果では,温度差が20K程度では,すぐには上昇する流れが生じませんでした.

代表速度をもっと小さく見積もれば,Gr/Re2 > 10のオーダーとなります.このように,無次元数の見積りでは,数倍程度の差ではなく,一般に,オーダーの違いに着目すべきであると考えられます.


更新状況:

June 9 2009 計算モデルを修正(solid を追加)し,計算し直しました.

 

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